倫敦塔」など収録 英国で漱石短編集出版

       −文芸評論家 フラナガン氏翻訳 題字 神戸の書家・小阪美鈴さん


 英国留学の体験を基にした「倫敦塔」などを収録した夏目漱石の短編集がこのほど、英国で出版された。
 西宮に住居を持つ英国人の文芸評論家ダミアン・フラナガンさんが翻訳し、神戸の書家・小阪美鈴さんが題字を担当した。

 フラナガンさんは1999年生まれ。19歳のとき英訳本で漱石を知り、神戸大大学院に留学して本格的に漱石を研究した。

 フラナガンさんが漱石にひかれるのは、作品の背後にある哲学的な思索だという。

 「漱石はニーチェなどの西洋哲学だけでなく、禅などの東洋思想にも造けいが深い。対立や矛盾を超越した精神を探求している」ところが日本では漱石を「私小説家」とする見方もある。それに驚いて一昨年、「日本人が知らない夏目漱石」(世界思想社)を出版、「漱石再評価」を呼びかける。

 しかし「文豪」漱石も英国では無名の存在。70年代までは「明暗」「こころ」などの英訳が出ていたが、今では絶版になり、一般の英国人が漱石を知る機会はほとんどないという。

 そこで「倫敦塔」など英国に関連した短編11編を2年かけて翻訳。
 解説や関連地図を付け、「英国人にも親しんでもらいたい」と漱石とシャーロックホームズが登場する山田風太郎の推理小説「黄色い下宿人」の英訳も収録した。

 本の題も「倫敦塔(The Tower Of London)」。フラナガンさんは「これ一冊で漱石の魅力が伝わるはず。英語圏で例のない本格的な漱石入門書」と話し、春には「門」の英訳も出版する予定だ。

 「倫敦塔」の題字を書いた小阪さんは「小説の雰囲気だけでなく、漱石の持つ品格まで字に表現できないかと考えた。漢字を知らない欧米の人にも何かを感じてもらえれば」と話している。
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