倫敦塔」の英訳本を母国で出版

         −僧籍の魅力伝えたい 英国人文筆家 ダミアン・フラナガンさん
       秘められた歴史イメージ 小阪さんがタイトル書

西宮市に住居を持つ英国人文筆家、ダミアンフラナガンさん(35)が敬愛する文豪、夏目漱石の「倫敦塔 The Tower Of London」の英訳本を英国で出版した。漱石は1900年から2年間、ロンドンに留学。

 英国とのかかわりが深い作品が多いが、英訳本のほとんどは絶版になり、一般には知られてないという。「母国の人たちにシェークスピアに匹敵する偉大な作家であることを伝えたい」と話す。

 漱石が留学時代に見物した倫敦塔について書いたタイトル作品を始め、自転車日記、カーライル博物館など英国関連の11作品を収録した。「欧州でも人気の三島由紀夫や川端康成の作品のような、『わかりやすい日本らしさ』はない。その代わり、西洋哲学、中国の古典、禅、絵画等さまざまな知識と思想が反映され、奥深さと複雑さがある」

 「漱石」に出会ったのは英文学を専攻していたケンブリッジ大学生時代。英訳のあった「我輩は猫である」の風刺調の文章に魅せられた。その後、漱石が全く違うタイプの傑作を次々と残したいることを知り、来日し、93年から6年間は神戸大学で漱石を研究した。

 故郷のマンチェスターと西宮を行き来しながら文筆活動を続け、03年に「日本人が知らない夏目漱石」(世界思想社)を出版。

 「門」はニーチェの哲学が反映されている。「三四郎」は英国の画家ハントの「雇われの羊飼い」から着想を得ている・・・、といった英国人の視点から漱石の新たな面に光をあてた。

 漱石作品の魅力は、比ゆや象徴的な表現。単なる英訳ではニュアンスが伝わりにくいため、45ページにわたる丁寧な注釈をつけた。タイトルの書は、知人の神戸市須磨区の書家、小阪美鈴さんが、作品を読み込み、幽閉、処刑など凄まじい権力闘争の歴史が秘められた塔のイメージを表現した。

 英訳本は書評雑誌で絶賛され、BBCラジオでも紹介された。夏には「坊っちゃん」「門」の英訳が再刊され、解説を書くことが決まった。「手応えを感じている。作品を読みさえすれば、漱石の素晴らしさが分かる」

 インターネットのオンライン書店で入手できる。定価3,155円

                                           記者 山本信也 
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