神戸の2書家、震災を表現
2007/01/18

 阪神・淡路大震災を書き続ける書家がいる。小阪美鈴さんと本多利雄さんは、ともに神戸在住。あの揺れを経験し、記憶し、表現せずにはいられない。十二年を経た今年は、何を思い、筆に託したのか。市内の二会場を訪ね、墨色の奥深くに込めた祈りに耳を澄ませた。(平松正子)


小阪美鈴さん 命の意味問い続け

道行く人からも見えるウインドーに「LET IT BE」などを掲げた小阪さん=神戸市中央区西町、菱の実ギャラリー

 〈国道43号線を東へ向かってはしる 一瞬の異次元空間への昇華 現世って何 人間って何〉。激しく傾き、不安定な文字で、繰り返される根源的な問いかけ。真っすぐ健全なものこそ疑わしく見えてくる。被災した街を運転中、ふと浮かんだ言葉を紙にぶつけた。

 「生死に境界はあるのか。死者も魂は生きているのではないか。今もまだ答えは出ない。たぶん一生問い続けるのでしょう」と小阪さん。

 もう一作は、薄墨で大書した〈LET IT BE〉。その上に、かな字で般若心経を円形に記した。悠揚たる英字に、涙の粒のような小がなの取り合わせが、不思議に心を和らげる。

 「多くの死の中で、私たちは生きることを許された。今また命の尊厳がしきりに議論されているが、もっとありのまま自由に生きていいのでは」

 震災の作品は直後から書いているが、発表し始めたのは一昨年。「神戸に住む者が過去・現在・未来を思うとき、今も必ず根底に震災がある。強いメッセージでなく、何げない言葉で考えるきっかけを示したい」。命への問いかけは続く。

 二月九日まで、神戸市中央区西町の「菱の実ギャラリー」(三菱UFJ信託銀行神戸ビルショーウインドー)。



Copyright(C) 2007 The Kobe Shimbun All Rights Reserved.
SEO対策 ショッピングカート レンタルサーバー /テキスト広告 アクセス解析 無料ホームページ ライブチャット ブログ